R6.9 敬老会のあり方

 9月は各地で敬老会の開催が予定されています。敬老会は、長年社会に貢献してきた高齢者を敬愛し、長寿をお祝いするものとして、さらに敬老意識を向上させることを目的に行われてきました。
すでに町内で開催された敬老会では地域の方々の舞踊やマジックショー、ゲーム大会などの出し物が盛りだくさんで、皆さん笑顔で楽しんでいました。
「コロナ禍で人と会う機会が少なかっただけに、久しぶりに近所の人たちと話ができて良かった」と開催を喜ぶ声が多く聞かれました。
年々地域での行事が少なくなる中、敬老会の開催は地域の絆を深める上で大切な行事です。しかし、コロナ禍を機に、全国的に敬老会のあり方を見直す動きが相次いでいます。
理由の一つに敬老会をお世話する人自体が高齢化し、負担が大きいこと、二つに対象となる高齢者が年々増加し、会場を確保することが困難になってきたことがあげられます。
その対応策として、各自治体では敬老会への招待者の対象年齢を引き上げたり、敬老会の開催を見直し記念品等を配る方式に切り替えたりするところもでてきました。効率化によって削減された分の経費は、介護予防や健康づくりに回すことにしていくそうです。
柴田町においては、現在全ての地区で敬老会が開催されており、その経費に対し町から対象の高齢者一人当たり2千円を地区に交付しています。
隣近所の付き合いが希薄化し、孤立する高齢者が増える中で、地区役員や民生委員、ボランティアなど多くの皆さんが敬老会の開催にかかわることで、地域でのつながりが深まりますし、また高齢者の実情を知る機会にもなると思っています。
現在、敬老会の開催については、廃止を含め、様々な意見が寄せられております。敬老会を開催の是非を検討していかなければならないというのも、時代の流れで仕方のないことなのかもしれません。改めて行政区の皆さんの意見を聞きながら敬老会のあり方を見直してまいります。
私としては、敬老会は地区住民同士の自主的な集いの場であり、支え合いの場づくりでもありますので、例えば子どもたちとのおしゃべりカフェの開催や昔の遊びの伝承など、新しいスタイルでの敬老会の開催も考えていただき、可能な限り継続して欲しいと願っています。

柴田町長 滝口 茂  

R6.8 夏休みでのキャンプ生活

 社会人男性が、夏休みにやってみたいことの一番人気はキャンプだそうです。スマホやパソコンの画面とのにらめっこの毎日や都会の喧騒から離れ、緑豊かな自然の中で家族や仲間とゆったりとした時間を過ごしたいというのが主な理由です。
私の思い出の中でも、学生時代に仲間と福島県の桧原湖畔や秋田県の田沢湖高原でキャンプをし、昼は登山や川遊び、夜は満天の星空の下でたき火を囲み、先輩のギターに合わせてフォークソングを歌ったことは今も忘れられません。
キャンプはとても楽しいものですが、一方で危険との隣り合わせでもあります。天候の急変で川が増水し中州に取り残されたり、川辺で足を滑らせておぼれたり、山道に迷って行方不明になる事故は後を絶ちません。また、最近では熊に襲われる事故も起きています。今の若い人たちは私の年代とは違って、小さな頃から自然と接する機会が少なく、自然現象や自然の脅威に対する知識や備えが十分ではないように思います。
キャンプを楽しく過ごすには、事前の準備として気象情報、動植物の生態や水の流れなどについてある程度の知識が必要ですし、また、テントの張り方、キャンプ用品の使い方や火の起こし方などのアウトドア活動の基礎技術を学んでおく必要もあります。このように、キャンプをするには一定の準備と手間がかかるので、最近ではホテル並みの豪華な施設に宿泊し、手ぶらで自然を快適に満喫できるグランピングがブームとなっており、全国各地で施設の整備が行われています。
これはこれで手軽にアウトドアが楽しめて良いのですが、やはりキャンプの醍醐味は自分で安全な場所を見つけてテントを張り、たき木を集めて火を起こし、ご飯を炊いて食べるといった非日常的な体験ができるところにあるのではないかと思います。時には雨や風など天候の急変で危険な目に遭ったりもしますが、困難を乗り越えるために家族や仲間が協力し合うことで絆がさらに深まったりもします。
キャンプは不便であり、危険を伴うこともありますが、便利さや快適さに慣れ親しんでいる私たちの日々の生活に、新鮮な刺激と活力をもたらしてくれるだけでなく、自然と共に生きることの心地良さを感じさせてもくれます。

柴田町長 滝口 茂  

R6.7 安定的な財源の確保 

 7月は柴田町の財政運営にとって最も気をもむ月です。理由は、地方交付税の令和6年度配分額が国から示されるからです。
近年、地方自治体では少子高齢化に伴う人口減少問題、デジタル化や公共施設の老朽化への対応などが喫緊の課題となっていますが、その対策に向けた財源の確保に苦しんでいます。
町の行政サービスは、町民の皆様や企業から預かる税金の範囲内で提供するのが理想です。しかし、町の税収だけでは町民の暮らしや企業活動などを支えたり、社会インフラを整備することができません。そのため、全国一律に提供しなければならない行政サービスを提供する際に不足する財源は、国からの地方交付税で補われているのが、多くの地方自治体の財政状況なのです。
柴田町の令和6年度当初予算(約140億円)で一番予算配分が大きかったのが子育て支援、高齢者や障害者の医療、介護、福祉などの社会保障経費で、約48億円と当初予算の34.4%に当たります。ちなみにお金をかけすぎているのではとの誤解が多い観光整備費は、太陽の村や観光物産交流館の指定管理料を含めて、全体の0.4%にあたる約5,000万円にすぎません。この投資額で柴田町の魅力を高め、観光客の誘客やふるさと納税の確保につなげています。
町の財政を良く知らない人の中には、「お金がないなら、国から補助金を多く持って来るのが首長や政治家の仕事だ」という人もいますが、地方交付税は配分ルールが厳格で、陳情や要望活動でどうにかなるものではありません。一方、補助金は陳情や政治活動が功を奏する場合があります。問題なのは、補助率が50%の補助金の場合、残りの50%は町が自前のお金(自主財源)を用意しなければならないことです。しかし、その自主税源も社会保障経費などの増加で、年々確保が難しくなってきているため、簡単に補助金を活用できなくなっています。
柴田町に限らず、地方自治体の財政は硬直化が進むばかりです。住民のために最低限保障しなければならない行政サービスについては、地方交付税による補てんを十分に行ってもらわなければ、この先地方の財政運営はますます困難になってきます。地方交付税の配分に一喜一憂しなくてもすむような安定的な地方財源の確保を国に求めていきたいと思います。

柴田町長 滝口 茂  

R6.6 災害への備え

 能登半島地震が発生して5カ月が過ぎました。被災地では、未だ生活再建や事業の再開に希望を見出せていない方々も多く、復旧復興の遅れを歯がゆく思っています。
 今回の能登半島地震と東日本大震災とでは異なる点が多々ありました。東日本大震災では津波被害が甚大でしたが、能登半島地震では主に地震の揺れそのものによる被害が大きかったということです。家屋や電柱などの倒壊、地盤の隆起、液状化や土砂崩れによる道路、水道などのライフラインの寸断によって、町の姿が大きく変わってしまいました。がれきの山や道路の損壊で、救助活動や消火活動などの初動対応は困難を極めました。高齢者のみの世帯が多いことや経済的な面から地震対策の基本である家屋の耐震化が、遅々として進んでいなかったことも被害を大きくした要因の一つでした。
 今後、柴田町もこうした町が壊滅した場合も想定し、対策を講じていかなければならないと肝に銘じたところです。
 今回の地震対応で印象に残ったのがNHKアナウンサーの冷静ながら鬼気迫る避難の呼びかけや、自衛隊はもとより、全国各自治体からの応援、災害派遣医療チーム(DMAT(ディーマット))、国土交通省緊急災害対策派遣隊(TEC(テック)‐FORCE(フォース))などの派遣が行われたことです。
 一方で、被災地の能登町や志賀町に派遣した職員からの報告では「避難所での水や食事の提供、清潔なトイレやプライバシーの確保においては、東日本大震災の教訓があまり生かされているようには見えなかった」とのことでした。それに比べ4月3日に発生した台湾東部沖での地震では、行政と民間の連携による危険な家屋やビルの迅速な撤去、また、避難所での屋内テントの設置によるプライバシーの確保やバランスの良い食事の提供など、災害対応が高く評価されました。改めて、過去の災害での教訓を生かした台湾と我国とでは、いざという時の災害対応力に雲泥の差があることを痛感したところです。
 わずか2分間の地震で、住まいやなりわいを失い途方に暮れている人たちが、今後の生活資金や事業再建資金を心配することなく、一日も早く日常の生活を取り戻せるよう、国はこれまで以上に、被災者に寄り添った支援策をさらに強化すべきだと思います。

柴田町長 滝口 茂   

R6.5 深刻化するエッセンシャルワーカー不足

 先日利用したタクシードライバーの話です。「定年退職後、嘱託で働いているが、新人が入ってこないのでシフトが組めず、夜も運転しなければならない。」と嘆いていました。
 少子高齢化の影響で、タクシー業界だけでなく、バスやトラックなどの運輸業のほか、建設、医療、介護、ホテル、小売など、人手不足はあらゆる分野に及んでいます。企業の中には、経営は順調なのに人手不足から事業を諦めたり、店を閉めるところも出てきました。
 我国はこれまで、人手不足の問題を外国人労働者を受け入れることでカバーしようとしてきましが、近年では、文化や生活習慣が異なる外国人居住者が増えることで、地域でのトラブルも目立つようになっています。
 人手不足の解決手段として今注目されているのが、AIやロボットを活用した業務の自動化、省力化です。セルフレジはもう当たり前ですし、料理をタッチパネルで注文し、配膳はロボットが行う飲食店も増えてきました。
 地方においても人手不足は深刻です。日常生活を支えてきたエッセンシャルワーカーの保育士、介護士や看護師、さらにバス・タクシーやトラックなどのドライバー不足、そして、地域のエッセンシャルワーカーとも言える消防団員、民生委員や児童委員、地区役員のなり手不足もあり、地域の安全安心で豊かな暮らしが脅かされるかもしれないという懸念が生じてきています。
 人手不足に対し各業界では、介護ロボットや自動運転技術などの導入による省力化を試みていますが、まだまだ完全に人に代わるには至っていません。また、人と人との関わりで成り立っている子育てや介護サービスの提供は、やはり人手がなければ十分に対応できません。
 こうした地域での人手不足問題を解決していくためには、まずはエッセンシャルワーカーの待遇や職場環境を改善し、余裕と誇りを持って働けるようにすることが先決です。また、安心を維持するためには、有償ボランティア制度の導入を検討する時期にきもています。
 当然、こうした取り組みは一つの自治体でできるものではありませんので、国も経済分野での人手不足対策だけでなく、地域のエッセンシャルワーカー不足対策にも、本腰を入れるべきだと思っています。
 
柴田町長 滝口 茂